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バロック・アンサンブルで送るアドヴェント・コンサート

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軽井沢追分教会のアドヴェント礼拝コンサート、楽しく終了しました。私は前日入りしてオルガンの練習をたっぷりしました。
おおお、4年ぶりのこの残響、このオルガン、この快い鍵盤のタッチ!もう弾いているだけで感動です。最高の礼拝堂、最高の楽器です。このオルガンで始終練習できたら上手くなること間違いなしです。
本番には私の従兄が千葉から車を飛ばして駆けつけてくれました。従兄の息子や娘は教会近くの佐久在住で、みんなして来てくれました。
今回も珍しい難曲、名曲揃い。懸案のバッハ、BWV146のオルガンコンチェルトも、(私としては)情熱的に弾き切ることができました。残響に配慮して、速いパッセージをノンレガートでぶっ飛ばすのは良い訓練になりました。それもこれも、高速ノンレガートにしっかり反応してくれるオルガンのおかげです。

# by veramasa818 | 2023-12-05 09:50 | Comments(0)

大里俊晴さんのこと

最近、大里俊晴さんの評論集を読んで、彼のことを思い出している。
今日11月17日は大里さんの命日だ。
大里さんは音楽学者で、前衛音楽や実験音楽が専門だった。もっぱら在野の人というイメージだったが、横浜国立大学の助教授(のちに教授)に就任された。その少し後、私は横浜国大の大学院に入学した。長い間フリーランスのオルガン弾きをやってきた私だが、その間音楽史についての話を人前ですることが増えてきて、きちんと勉強せねばならないなあと思ったのだ。どうせなら学位を取りたい。でもその頃の私は、3つの大学のオルガニスト、1つの大学の非常勤講師、2つの合唱団の伴奏者、お弟子さん20人ほど、という仕事量で、毎日走り回っていた。だから、大学院に行くなら近いところ(当時横浜市に住んでいた)で、授業料が安くて、硬骨の音楽学者がびしばし鍛えてくれそうなところ、と考え、横浜国大以外に選択肢はなかった。私は「硬骨の音楽学者」国安洋先生にびしばし鍛えられることになった。
その国大で、たまたま他の音楽学の先生が、「おもしろい学者がおられるよ」と言って紹介してくださったのが大里先生だった。第一印象は「私の弟に似たタイプ」ということだった。この世を生きていくにはあまりに純粋で、自分の信じているもの、愛している研究対象に全生活が集中してしまっているタイプ。
大里先生は黒のTシャツ、黒のズボン、いつもはサングラスをかけているのだが、初対面の時はそれはかけておらず、優しくて人懐こい目をしたシャイな人だった。そのころ、大里先生は家賃が払えず、下宿を追い出されそうだということだった。国立大学の助教授がなぜ・・・?と不思議だったが、とにかくあるだけのお金を本とレコード、CDなどに使ってしまって、いつもお金がなく、しかもその大量の本やレコード、CDと機材で下宿の床が抜けそうなのだと聞いた。
彼の授業に潜り込んでみたが、ほとんど「音」ともいえないような「曲」で、私が即興味を持てる類の音楽ではなかった。おそらく、この先生は学生が本当に興味を持っているかどうかを見抜いてしまい、興味もないのにあるふりをすることを許してくれないタイプだと思った。また、私はあまりに忙しく、現実問題として修士論文のテーマに関係する授業以外を履修する余裕もなかった。
大里先生がいらした頃の国大には、演劇の唐十郎さんや哲学の室井尚さんがおられ、このお二人と大里さんが力を合わせて、ユニークで濁りのない学問・芸術の活動を繰り広げていた。「劇団唐ゼミ」が大里ゼミと一緒になって注目を集めていた。私はアングラ演劇の世代であり(遠い昔の大学生時代、母校のアングラ演劇にかかわっていた。その演劇部を立ち上げたのは角野卓造さんで、演劇部部長だった)、懐かしくそれを眺めていた。本当に面白い大学だった。留学生も多く、私は在学中、韓国からの留学生(本国ではすでに高校の先生)のテューターをつとめたりした。
その後国立大学は法人化され、特に横浜国立大学は、教員養成の目的を強化するように指示された。「文系」の授業は削られていった。室井尚先生は必死にそれに抵抗し、オープンキャンパスでも声高に、文系授業の重要さを語っていた。
それより前、2009年に大里さんは病気で亡くなった。51歳だった。そして今年、2023年3月、すでに定年退官されていた室井先生も亡くなった。
大里さんは単著を残していないけれど、逝去された後、彼を理解し惜しむ人々が協力して、追悼文集『役立たずの彼方に』と、評論集『マイナー音楽のために』を出版した。
私は授業こそ履修しなかったが、大里さんのことはたえず気になった。桜美林の学生が横浜国大の大学院を受験したい、と言ったとき、大学へ連れて行って紹介したこともある。
大里さんはまた、横浜国大の先生方に人気があった。私を紹介してくださった音楽学の先生は、モーツァルトなどの研究が専門であったが、ご自分の専門範囲に大里さんの方法論を取り入れていたと思う。実験的なコンサートを企画し、私も何度か参加した。大里さんが客席にいることもあった。
アカデミックな先生方は、大里さんのありかたに憧れのようなものを持っていたかもしれない。大里さんはみんなに愛されていた。
大里さんの思想に流れるものについて、『役立たずの彼方に』のなかで長門洋平さんがこうまとめている。
「あれはどうしたって理解できない」というものに遭遇した時に、そこで一瞬立ち止まって「なぜ理解できないのか」と自問することのできない人間は、その理解不可能なものを黙殺し、排斥し、差別することしかできない。この心理作用こそ、人種差別や帝国主義、ファシズムの源泉なのである。己の感性を信じるな。少なくとも、勉強するために大学へ通っている学生には、世界を相対的に把握するための努力を要求する。
「文化的相対主義」が大里さんの根底にあるものだったのだろう。これは私の弟の遺稿に綴られた「平凡ならざるもの、普通ならざるものとして排斥されるものに自分の関心は向かう」と似ている。
『マイナー音楽のために』で取り上げられた作品は、私などにおいそれと理解できるものではないが、今すこしずつ聴いている。
この文を読んでくださっている方の中に、自らの音楽の幅を広げる必要を感じている方がいたら、その道案内としてこの本が役に立ちそうに思う。

# by veramasa818 | 2023-11-17 21:10 | Comments(0)

ウィリアム・バード没後400年

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季刊『礼拝と音楽』ウィリアム・バード没後400年記念特集に寄稿しました。
16世紀後半から17世紀、イングランドは宗教改革の余波が続き、イングランド国教会とカトリックのどちらを国の宗教とするか、揺れ続けていました。王朝に仕える音楽家たちも、その波をたっぷりと被ります。今回、鍵盤楽器作品について書かせていただきましたが、いろいろと制約のある中でヴァージナルという小さな楽器に命を吹き込んだ彼の活動とその作品は刺激的で、今聴いても斬新です。

政治と宗教がからみあう中で、宮廷と教会に出入りする音楽家たちの多くはスパイの役割さえも果たしていました。
そのありさまを瞥見するには、やはりシェイクスピアを読まなければなりません。
16~7世紀英国音楽を研究する者は、シェイクスピアを知らなければ、というのは以前から思っていたことでしたが、この機会にヤフオクで、小田島雄志さん訳の全集を購入。来年2月までには完読するつもりです。
シェイクスピアの、特に史劇は現実とは遠くかけ離れていることを念頭に置きつつ、この時代を理解するために多くのことを汲み取りたいと思います。

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# by veramasa818 | 2023-10-20 11:51 | Comments(0)

『エディンバラ賛歌』立川ジュンク堂にて

『エディンバラ賛歌』立川ジュンク堂にて_b0412769_12271454.jpg
映画鑑賞に立川へ行きました。映画館と同じビルにあるジュンク堂をのぞいたところ、私の著書が掲げられていました!とても嬉しく、感謝の思いです。
ジュンク堂の豊富な品ぞろえには心がワクワクします。あれもこれも欲しくなる。ひさしぶりに本格大型書店をさまよい歩き、心の栄養をいただきました。





# by veramasa818 | 2023-09-30 12:37 | Comments(0)

2023年度残りの予定

暑い暑い夏が、ようやく終わろうとしています。汗っかきで暑さに弱い私にとって、夏はひたすら耐える季節です。
秋から冬は忙しくも楽しい季節!
今年は12月にコンサートが集中しておりますので、ご案内します。

●12月3日(日)14:00 アドベント礼拝コンサート 日本キリスト教団軽井沢追分教会 (共演:アンサンブルSDG)
●12月7日(木)17:10 オルガン ミニコンサート 関東学院大学金沢八景キャンパス チャペル
●12月10日(日)13:00 オベリンナー・グローリアコール クリスマスコンサート 日本キリスト教団ロゴス教会(私はバロックオルガン演奏と指揮をします)
●12月17日(日)10:30 日本キリスト教団橋本教会 オルガン奉献礼拝とコンサート (共演:ヴァイオリン&バロックヴァイオリン 松橋輝子)
●12月20日(水)12:30 日本キリスト教団原宿教会 ランチタイム・メディテーション
●12月24日(日)10:30 日本キリスト教団めじろ台教会 クリスマス礼拝
        19:00 日本キリスト教団橋本教会 キャンドルライト・礼拝

全て入場無料です。
曲目などについて、お問い合わせは toccata.organ@gmail.com へお願いします。

そのほかに、季刊誌『礼拝と音楽』に小文「テューダー朝鍵盤音楽の一側面」が載る予定です。
研究者としては、17世紀スコットランドの鍵盤音楽手稿譜の整理と分析に取り組んでいます。
手稿譜の調査のため、来年2月~3月、1か月ほどエディンバラに滞在します。
いまからとてもとても楽しみです。


# by veramasa818 | 2023-09-07 12:22 | Comments(0)

エディンバラ大学の客員研究員をつとめた2011年以降、スコットランドの教会音楽と16~7世紀鍵盤音楽の研究をしています。パイプオルガン奏者と研究者という2つのキャリアは、どちらも私のライフワーク。エディンバラと東京を行き来しています。


by veramasa818